ネス短編18

Morning glow

強かなキミ

※会話文のみです。

「はあ、クーラー最高……」
「楽園はここに在った……」

「ん、ポストになんか届いたみたい。ナナシ、ちょっと見てきてよ」
「えー、ネスの家宛なんだからネスが見に行けばいいじゃん」

「それなら言わせてもらうけど、突然遊びに来た君をこうして受け入れてるんだよ。しかもジュースとアイスのサービス付きでね。少しは頼みごと聞いてくれたっていいでしょ」
「うっ、それはそうだけど……身体が言うこと聞かないでーす」

「君ってやつは……仕方ない、それじゃ公平にじゃんけんで。ポイ」
「あ、負けた」

「という訳でナナシが取りに行ってね」
「待ってネス。心読んだでしょ」

「だってどうしても外出たくないもん」
「なんて男だ」

「お互い様だよ。ほら、早くポスト見てきて」
「あーやだやだ。今からそんなんじゃ将来どんな男になるか不安で仕方ないよ、私」

「心配しなくていいよ。この先どうなろうとナナシの隣にいるのだけは確定してるし」
「え、それ強制?」

「ナナシこそ将来どうなるか分からないし。それなら君のことそれなりに熟知してる僕が適任だと思わない?」
「うわ、なんでそんなに自信満々なの」

「君ならどんな僕でも受け入れてくれるって信じてるから」
「これまた随分と熱烈な。どこにそんな確証があるの?」

「んー……君の家にも冷房はあるのに、炎天下の中わざわざ僕の家に遊びに来たこと」
「それは、ウチの冷房の調子が悪いからで――

「昨日買い換えたばかりって言ってたのに?」
「うっ。ネスの家はいつも美味しいお菓子出してくれるからで――

「でもナナシ、今日はオススメとか言って自分の家から旅行のお土産持って来たよね?」
「い、家だと兄弟が騒がしくて落ち着かないから――

「来週までクラブの合宿に行ってるんじゃなかった?」
「ぐぬ……ああもう! そうだよ、ネスに会いたかったから来たの! これでいいっ?」

「うん、正直でよろしい」
「はあ……こんな誘導しなくたって、どうせ私の心なんて全部見透かしてたんでしょ」

「まあ、ある程度はね。でもやっぱり君の口から直接聞きたかったから」
「その眩しい笑顔やめて。余計タチ悪いって」

「ふふっ、ごめんね」
「謝る気ゼロじゃん。この策士め」

「褒め言葉として受け取っておくよ。それよりポスト……ってトレーシー、取りに行ってくれたんだ」
「だってお兄ちゃんもナナシさんも中々部屋から出てこないんだもん。手紙はパパからだったわ。"仕事がひと段落着いたから来月には一旦帰る"って。それにしても、痴話喧嘩なら外でしてよね」

「痴話喧嘩って……やだなあトレーシーちゃん。そんなんじゃないってのー」
「そんなこと言って、さっきまでイチャイチャしてたくせに」

「はは、廊下まで聞こえたか」
「何笑ってんの、ネスも否定してよ」

「別にいいじゃん。両想いなのは事実だし」
「えっ、ちょっと待って?」

「へえ、やっとその気になったのね。ナナシさんが私のお義姉さんになるのかあ。ママも前から楽しみにしてたし、これで将来は大丈夫ね」
「ああ、流石兄妹だわ。話の流し方も満面の笑顔も瓜二つ」

「この通り、僕の家族はナナシを迎え入れる気満々だよ。君の家族も僕を気に入ってくれてることだしね」
「はあー……既に外堀は埋められつつある、と」

「やっと白旗あげる気になった?」
「はいはい、降参でーす」

「素直なんだかそうじゃないんだか。ま、いいか。これからは遠慮しないからね」
「そもそもネスが私に遠慮するとか、滅多になかったけどなあ……どうぞお手柔らかに」

「それじゃ初デートは来週の夏祭りってことで。必ず浴衣着てきてね」
「そういうとこだぞ。一応……準備はしておくけど」

初の妹参戦(?)。




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