バレンタインネタによるSS。
それぞれ会話文のみの話となっています。
――二月十四日。年に一度訪れる女子の為の祭典、バレンタインデーだ。とは言うものの内容は単純で、女性が意中の男性にお菓子を贈るといったもの。
ここ数年ではお世話になった人や友達に感謝の気持ちを込めて贈る"友チョコ"や、自分だけで楽しむ"ご褒美チョコ"なんてものもある。
今日は屋敷中、ファイターも使用人もその話題で持ちきりだ。女性陣は緊張のあまり固まっていたり、逆に盛り上がっていたり。男性陣もそわそわとしていて、皆どこか落ち着きがないといった雰囲気。
そして私も昨日は仕事を終え次第、厨房の一角を借りて深夜までチョコレート作りに励んだ。
その際お菓子作りを得意としているピーチ姫の協力を受けて、悪戦苦闘しつつも味だけは自信のあるものを作ることができた。
ラッピングも様々な資料を参考にして、試行錯誤の末にようやく仕上げられた。これで準備は全て完了だ。これも全て大切な"あの人"へ贈るため。
この日の業務を終えて更衣室を出た私は、その足で"彼"の姿を探す。
ようやく見つけた目的の人物は、私を前に目を丸くした――。
※各キャラ名をタップ/クリックで開閉します。
「あ、ナナシ。仕事終わったところ? お疲れ様」
「ネスこそ、今日の試合お疲れ様。それでさ、ネスに渡したいものがあって……」
「……渡したいもの?」
「うん。その、今日は……あの日、だし」
「まさか、本当に君から貰えるなんてね。ずっと願ってた甲斐があったな」
「え……っ、ずっと願ってたって……どういうこと?」
「僕は前から君のこと、好きだったんだよ。今まで散々アプローチしてきたっていうのに、君は素で気付いてなかったみたいだけど」
「あ、アプローチ!? そういえば思い当たるフシもあるような、無いような……?」
「全く、ナナシの鈍感。でもまあいっか……僕にくれるんだよね、それ」
「それじゃ……受け取ってくれるの?」
「勿論。ナナシごとそのチョコ、頂くよ」
「良かったあ……ん? 私ごと?」
「だって両想いなんでしょ、僕達」
"彼に引き込まれるまま、恋に落ちていく――"
「わっ、ナナシ……っ、お疲れ様」
「お疲れ様。そんなに驚かなくたっていいのに」
「ごめん。ナナシのこと考えてたら突然現れたから、つい」
「私のこと、考えてたって……」
「だって今日は……バレンタインだし、余計意識しちゃってさ」
「……ねえリュカ。こっちの勘違いなら申し訳ないけど、もしかしてリュカは私のこと――」
「ナナシの勘違いなんかじゃない。出会った頃からずっと、君のこと気になってた。一緒にいて楽しいし、安らぐから……って、ナナシ?」
「えっと、今度は私の方が驚いちゃった……嬉しくて」
「じゃあ、その手に持ってる袋って、もしかして」
「勿論、リュカに渡す為に用意したの。受け取ってくれる……?」
「僕には断る理由なんかないよ。本当に嬉しい……ありがとうナナシ」
"勇気を出して、踏み込んで良かった――"
「ナナシか。って、どうしたんだよ。険しい顔して」
「……別に。紙袋から溢れるぐらい貰ってるなら、今更私のはいらないよねって思っただけ。それじゃ」
「待てよ、いらないなんて誰が言ったんだよ」
「わっ、ちょっと――」
「オレに渡すために、ここまで飾り付けしてくれたんだ」
「でもリンク、もっと可愛らしい箱のお菓子、沢山貰ってるじゃん……」
「分かってないな。ナナシが来てくれるのを待ってる間に溜まってたんだよ」
「何それ。モテモテのリンクが私を待ってた理由って何?」
「言わないと分からないのか?」
「ちょ、何、近いって!」
「君からの本命を期待してるからだろ」
「え、それって……つまり、」
「ナナシも早く、覚悟決めてくれないか」
"その言葉は恐ろしい程に真っ直ぐで、狡いとさえ思えた――"
「え、あっ、ナナシ……! お、オツカレサマ……」
「ちょっと、何そのカタコト……!」
「笑わないでよ! だって、今日は……その、アレだし!」
「バレンタインだもんね。だから私もピットに作ってきたんだ」
「へぇ、そうなんだー……って、僕にぃ!?」
「そうだよ……って、固まらないでよ。私だって恥ずかしいんだけど!」
「ご、ごめんごめん! まさか僕に作ってきてくれるなんて思わなかったから、夢みたいで……」
「そんなに……嬉しかった?」
「当たり前だよ! 好きな人からの贈り物なんだ、から……あぁぁー! 今の無し!!」
「そこまで言っておいて取り消しちゃうんだ……ピットの意気地無し」
「いや、そういう意味じゃなくて、だからその……ええい、もう! 君が大好きだ!」
"数秒後、私は彼と同じくらい大きな声で、同じ返答をしていた――"
「……そんな所で何コソコソやってる」
「うわ、バレてる……!」
「あんなに挙動不審だったら嫌でも気付くだろ。それで、オレに何か用か」
「う、うん……渡そうかと思ってるものがあって、でも……やっぱり、」
「はっきりしろ。渡すものがあるなら早く寄越せ」
「えっと、味は良いと思ってるんだけど、でも見た目失敗しちゃって……だから作り直そうかって――」
「そんなの、待ってられるか」
「明日には作り直して持って行く、だから――」
「ナナシ。お前が来るのを、どれだけ待ってたと思ってるんだ」
「……もしかして一日中、待っててくれてたの?」
「お前がその箱をオレに渡すまでがバレンタインだろうが」
"これじゃ、彼を焦らしているようなものじゃないか――"
「ソニック、ようやく見つけた……」
「Hey,ナナシ。ヘロヘロじゃないか」
「それほど君を探すのが大変だってこと……」
「で、そんなになるまでオレを探してたのには理由があるんだろ?」
「まあね。今日が何の日かは知ってるでしょ」
「Of course.バレンタイン、だろ? ってことは……期待していいんだよな?」
「その為に探してたんだからね。ほら、これ。味だけは保証するよ」
「Thanks! ラッピングを解くのが勿体無いくらいだぜ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、中身が肝心だから……後でゆっくり食べてほしいな……って、急に顔近付けないでよ!」
「ホワイトデー、期待してくれていいぜ」
「へっ? ソニック、お返し考えてるの……?」
「当たり前だろ。お前の気持ちに負けないくらい、とびっきりの一日を約束する」
"どうしよう、一ヶ月後の"今"が楽しみでたまらない――"
「やっぱり裏庭にいた。お疲れ様、レッド」
「ナナシも、お疲れ様。その紙袋……どうしたの」
「今日はバレンタインでしょ。私からレッドに渡すものっていえばひとつしかないじゃん!」
「ああ、今日がバレンタインだったのか」
「相変わらず世の動きに疎いなあ……ほら、レッドの分。こっちの袋はゼニガメ達の分だよ。ポフレやポケマメが入ってるから」
「ポケモン達の分も用意してくれたのか、ありがとう」
「当然だよ。レッドの大切な仲間達だし、一緒にバレンタインを楽しんで欲しかったんだ」
「ゼニガメ達も喜ぶよ。特にリザードンはよく食べるから、ありがたいな」
「レッドに渡したチョコも、一応本気で作ったから……」
「そうか。後でゆっくり頂くことにするよ」
「……"本気"の意味、しっかり受け止めてよね」
「全部食べるから大丈夫だよ。ゼニガメ、フシギソウ、リザードン。ナナシがお菓子を作ってきてくれたんだ。お礼をしてから食べるんだぞ」
"そのチョコが本命だって、ちゃんと気付いてくれるかな――"
ハッピーバレンタイン!